第3章 学園一の美少女決定戦「幼馴染と転入生、俺を巡る学園ラブコメ戦争」

幼馴染と転入生、俺を巡る学園ラブコメ戦争2026-05-08 14:06:02

第3章 学園一の美少女決定戦「幼馴染と転入生、俺を巡る学園ラブコメ戦争」

朝の教室に足を踏み入れた瞬間、違和感が全身を走った。
いつものように騒がしいはずの空気が、妙にざわついている。そして、その視線の先は——
「あれ?」
俺の席の隣。空いているはずの席に、金色の髪が揺れていた。
「おはよう、ユウトくん」
藤堂莉奈が、満面の笑みで手を振っている。隣の席——本来なら誰も座らない空席なのに、堂々と腰を下ろしている。
(いや、隣って......隣の席、空いてるのに座るのか......!?)
「今日は私のターンだから、隣、いいよね?」
そう言いながら、莉奈は目の前の机に並べられたものを指差した。
——そこには、フランス産のバターを使ったクロワッサン、彩り豊かなサラダ、そして搾りたてのオレンジジュースが丁寧にセットされていた。
教室が、ざわめく。
「ねえ、あれ......藤堂さんが佐藤くんの隣に......」
「朝から、なんか凄いもの作ってきてるし......」
「あの二人、付き合ってるの......?」
視線が痛い。とてつもなく痛い。
(助けてくれ......)
そんな俺を遠くから見つめる、もう一人の視線に気づいた。
高橋葵が、窓際の席で牙を軋ませていた。目が合った瞬間、彼女は「ふんっ」とそっぽを向いたが、その耳が真っ赤になっているのを見逃さなかった。
(......あの女、策士......)
葵のその内心が、まるで聞こえてきたようだった。
「ねえ、ユウトくん?座ってよ」
莉奈に促され、俺は隣の席——本来の席に腰を下ろした。すると、クロワッサンの芳ばしい香りが鼻腔をくすぐる。
「これ、パリの老舗『ラ・ブーランジェリー』のレシピなの。私、毎朝早起きして作ったんだ」
莉奈は誇らしげに説明した。バターが織りなす層の美しさ、サクサクとした食感を想像させる見た目——間違いなく、俺の朝食とは別次元のものだ。
(パリの老舗レシピって......朝からどんだけ時間かけてんだよ......)
「あ、あの......」
声がした。葵が俺たちの席まで歩いてきていた。手には、ラブルームに包まれたお弁当が——昨日と同じだ。
「悠斗の朝食は、私が——」
そこまで言って、葵は言葉を詰まらせた。莉奈の朝食の豪華さを前にして、完全に気圧されている。
「あら、高橋さん」
莉奈はにっこりと笑った。まるで朝日のような、無邪気で眩しい笑顔。
「昨日はあなたのターンだったんでしょ?今日は私の番なの」
「な、何を——」
「フフ、ユウトくんを巡る戦争、始まったばかりじゃない」
(いや、俺の周りで何の戦争が始まってるんだ......!?)
葵の肩が震えた。握りしめたお弁当が、悲鳴を上げている。
「悠斗!」
葵が前に出た瞬間——
「あおい、落ち着いて」
美咲が葵の肩を押さえた。いつものように穏やかな笑みを浮かべながら。
「今日は約束通り莉奈の番なんだから」
「でも......!」
「昨日の夜、電話で話したじゃない。一日交代制で、公平にやろうって」
(あの二人、そんな約束を......!?)
葵は悔しそうに唇を噛んだ。でも、美咲の言葉に従い、一歩下がった。
「わ、わかった......今日は見逃してあげる」
「ありがとう、葵ちゃん」
莉奈が、あざやかな勝利の笑みを見せた。
(なんで俺が朝から修羅場に巻き込まれてるんだ......)
頭を抱えたくなる。
そんな教室の空気を無視し、担任の田中先生が入ってきた。
「おーい、そろそろ席について。朝礼始めるぞ」
俺たちは慌てて自分の席に戻る。莉奈はしぶしぶ隣の席——本来の席に移動した。
「ちょっと待って、体育祭のペア決めの件を伝える」
田中先生が黒板を叩いた。
「二人三脚の組み合わせだが......」
俺は、隣の席で身を乗り出す莉奈と、後ろから鋭い視線を送る葵の間で、身動きが取れなかった。
「佐藤悠斗と——」
先生の声が、妙に長く感じる。
「——藤堂莉奈」
(え?)
「高橋葵と山田健太」
教室が、ざわついた。
「な、なんで......!」
葵の声が上擦った。振り返ると、彼女は真っ青な顔をしていた。
「おいおい、俺と葵か......」
後ろの席の健太が、不敵な笑みを浮かべた。そして、俺にウィンクした。
「悠斗、羨ましいぜ。美少女とペアだなんてよ」
(いや、お前も美少女とペアじゃん......)
莉奈が、小さく笑った。
「フフ、運命だね、ユウトくん」
その言葉を聞いて、葵の顔がますます青ざめていく。
(偶然、か......?)
なぜか、莉奈がペアになったことに、妙に納得できてしまう自分がいた。
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昼休み。
俺は莉奈に連れられ、グラウンドにいた。
「早速練習しましょ」
「いや、まだ体育祭まで時間あるだろ......」
「準備は早い方がいいのよ」
そう言いながら、莉奈は紐を取り出した。二人三脚用の布——いわゆる『マジックテープ』だ。
「腕、組んで?」
「え——」
莉奈が、いきなり俺の腕に絡みついてきた。柔らかい感触が、腕に伝わる。
(こ、この距離は危険だ......!)
「ユウトくん、足、合わせて。一、二、一、二」
「お、おう......」
ぎこちなく歩き始める。莉奈の体が、一歩ごとにぶつかってくる。
シャンプーの香りがする。甘くて、少し柑橘系の——
(やばい。心臓の音、聞こえてないよな......)
「パリではね、誰も私のことを『藤堂莉奈』として見てくれなかったの」
突然、莉奈がぽつりと言った。
「え?」
「みんな、『藤堂グループの娘』でしか見てくれなかった。お金持ちのお嬢様。異国のお姫様。......でも、ユウトくんは」
莉奈が、こちらを見上げた。青い瞳が、真っ直ぐに俺を見つめている。
「私を、私として見てくれるのよね」
その言葉に、胸が締め付けられるような気がした。
「私、ずっと帰る場所が欲しかったの。パリにいても、どこか心が迷子になってて。でも、ユウトくんの隣にいると——」
莉奈が、もっと近づいた。
「——帰る場所がある気がするの」
(こ、これは......)
俺の心臓が、大きく跳ねた。
遠くで、何かが視界に入った。葵だ。校舎の窓から、こっちを見ている。手には、何か紙切れのようなものを握りしめていた。
「10年分の思いが......」
小さく呟く声が、風に乗って流れた。
「——負けるわけない......!」
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放課後。
教室を出ようとした瞬間、腕を掴まれた。
「悠斗、ちょっと来て」
葵だった。いきなり、強引に引っ張られていく。
「ちょ、ちょっと——」
「話があるの」
階段を上り、屋上の扉を開けた。夕暮れの光が、一気に差し込んでくる。
「ここで、なにを——」
「昨日の約束」
葵が振り返った。その目が、少し潤んでいる。
「守るつもりだった。一日交代制で、公平にやろうって。でも」
彼女が、拳を握り締めた。
「あんなに笑顔で話す悠斗見たら......我慢できなくなった」
「葵......」
「悠斗が莉奈と二人三脚練習してる間......ずっと胸が痛かった。こんなの、初めて。こんな気持ち、初めてなの」
葵が、一歩近づいた。
「私、10年間ずっと見てたのに......海外の女に負けるわけない。絶対に負けさせない」
涙が、彼女の頬を伝った。
「葵......」
「私のこと、少しは見てよね。10年間の思い、無駄にしないでよね」
その姿に、俺の心が大きく揺れた。
(どっちも、大切で......)
そんな時——
屋上の扉が開いた。
「いたいた。あおい、勝手に連れ去るのはずるいわよ」
美咲が、莉奈を連れて入ってきた。
「美咲......」
「莉奈、教えてあげる」
美咲は、真剣な表情で莉奈を見た。
「あなた、藤堂グループの御曹司でしょ?そんな人がなんでうちの学校に?」
「......バレちゃった」
莉奈は、少し困ったように笑った。
「でも、私の目的は本当なの。ユウトくんのことが——」
「悠斗のこと?なにそれ!?」
葵が、泣き腫らした顔で叫んだ。
莉奈は、微笑んだ。謎めいた、どこか懐かしげな笑み。
「昔の約束があるの。ユウトくんにだけは伝えたいことが」
「約束......?」
俺は、首を傾げた。
莉奈は、もう何も言わなかった。ただ、夕暮れの空を見上げている。
「体育祭が終わったら、話すわ」
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屋上は、黄昏に包まれていた。
葵と莉奈。二人のヒロインが、俺を挟んで向かい合っている。
「悠斗」
「ユウトくん」
二人同時に、名前を呼ばれた。
「どっちがいいの!?」
(選べない......どっちも、どっちも大切で......)
葵は、幼い頃からの思いを胸に、涙を浮かべている。
莉奈は、謎めいた過去を秘めて、優しく微笑んでいる。
どっちも、傷つけたくない。
「体育祭が終わってから......答える」
言ってしまった。
二人とも、不満そうな顔をした。でも——
「......わかった」
葵が、小さく頷いた。
「絶対、絶対選んでよね」
「フフ、楽しみにしてる」
莉奈が、ウィンクした。
「私、絶対に負けないから」
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夜。
俺はベッドに横たわり、一日を振り返っていた。
あれから、何度も葵の涙と莉奈の笑顔が頭をよぎった。
(選べない......どうしようもなく、二人とも——)
スマートフォンの通知音が鳴った。
見ると、莉奈からのメールだった。
添付ファイルを開いた瞬間、俺の思考が停止した。
——そこに写っていたのは、幼い頃の俺と、女の子だった。海辺の写真。10年前の、夏の記憶。
「覚えてる?10年前の約束」
莉奈からのメッセージが続く。
「10年前の夏、海辺で出会った子供の約束。ユウトくん、もう気づいてるでしょ?」
俺の手が震えた。
あの時の女の子。砂浜で泣いていた女の子。俺が手を差し伸べた女の子。
「まさか、莉奈が......!?」
窓の外では、体育祭の準備が進んでいる。そして、待ち受けるのは——
さらに激しい二人の攻防。
そして、思いもよらない『第三の刺客』の登場。
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