第2章 幼馴染の逆襲「幼馴染と転入生、俺を巡る学園ラブコメ戦争」

幼馴染と転入生、俺を巡る学園ラブコメ戦争2026-05-08 14:05:52

第2章 幼馴染の逆襲「幼馴染と転入生、俺を巡る学園ラブコメ戦争」

ドアを開けた瞬間、俺は自分の目を疑った。
「おはよう、悠斗」
左側には、桜色の髪を朝日に染めながら、完璧な微笑みを浮かべる葵が立っている。スプリングコートのポケットから、淡いピンクの包みが覗いていた。弁当袋だ。それも、俺の名前が刺繍されているやつ。
「おっはよー!ユウト!」
右側では、元気満点に手を振る莉奈がニッコリ笑っている。海外育ちらしいカラフルなスカーフを制服に巻き、金髪が春のそよ風に揺れている。
(……昨日の予感、当たった)
内心で大きくため息をついた。莉奈が隣に引っ越してきた時から、こうなることは分かっていた。いや、分かっていたけど——
「悠斗、今日も一緒に登校しましょう」
葵がそう言った刹那、莉奈が腕を絡めてきた。
「えへへ、私も一緒に行くね!パリじゃこんな桜の道、見られなかったんだもん」
(いやいや、物理的に無理だって!)
二人に挟まれたまま、俺は通学路へと歩き出した。満開の桜が舞い散る中、周囲からの視線が痛いほど刺さってくる。
「ねえ、あれって……」
「桜宮さんと、あの転校生?」
「二人とも、佐藤くんの隣?」
通学路の桜並木は、春の陽気に誘われて他校の生徒も多く行き交う。そんな中、俺たち三人の異様な佇まいは、注目を集めないわけがなかった。
葵が突然、そっと俺の腕に手を回してきた。
「悠斗、昨日は疲れたでしょう?今日は私が支えてあげる」
「ちょ、葵——」
「あ、ずるい!私も!」
莉奈が負けじと、反対側から俺の腕を抱きしめた。
(これ、完全に公開処刑じゃん……)
左右から柔らかい感触が伝わってくる。いや、今はそんなこと考えてる場合じゃない。周りの男子生徒たちの視線がマジで痛い。
「おい、あれ見ろよ……」
「佐藤のやつ、何であんな美少女二人に挟まれてんだよ……」
「羨ましすぎて吐く……」
遠くで、見覚えのある笑い声が聞こえた。
「ははは!悠斗、お前相変わらず災難体質だな!」
健太だ。あいつ、絶対ニヤニヤしてる。
(おい、助けろよ……!)
俺の視線に気づいたのか、健太は肩をすくめてそのまま去っていった。あの裏切り者め。
「ねえ、ユウト」
莉奈が顔を近づけてきた。甘いシャンプーの香りがする。
「パリの夜は綺麗だったよ。でも——」
彼女は一瞬、儚げな表情を見せた。
「ユウトの写真を見ながら、寂しかったな」
「莉奈……」
「悠斗」
葵が少し強く腕を引いた。目が笑っていない。
「そろそろ教室ですよ。遅刻します」
(目が笑ってない、絶対に笑ってない……)
教室に着くと、すでに朝のホームルームが始まる時間だった。俺が席につくと、葵がすっと前に立ち、包みを置いた。
「悠斗の好物、全部入れてあるから」
淡いピンクの弁当袋には、小さく「悠斗♡」と刺繍されている。
(いや、これ完全に俺専用じゃん……)
「あ、それ私も!」
莉奈がカバンを探り、小さな箱を取り出した。
「パリで買ってきたマカロン!有名なお店のやつだよ!」
色とりどりのマカロンが、透明なケースに整然と並んでいる。
「二人とも、佐藤くんに?」
「え、マジで?」
「あの佐藤が?」
教室がざわついた。男子からは羨望の視線、女子からは好奇心のこもった視線が飛んでくる。
「いや、これはその……」
「悠斗、遠慮しなくていいのよ」
葵が優しく——しかし圧力を込めて——微笑んだ。
「私、朝早く起きて作ったんだから」
「私も、空港で買うの大変だったんだもん!」
(どっちも断れない……!)
俺が途方に暮れていると、教室の奥で黒髪の少女が静かに立ち上がった。
伊藤美咲。生徒会副会長で、学年トップの秀才。黒縁の眼鏡が知的な雰囲気を醸し出し、整った顔立ちはクラス一の美少女と言っても過言ではない。
「桜宮さん、ちょっといいかしら」
美咲が葵を廊下に呼び出した。俺はほっと胸を撫で下ろすが、同時に不安も湧いてくる。
(美咲さんが葵を呼び出すって……何かあるのか?)
廊下で、美咲は葵の肩に手を置き、静かに話し始めた。
「手伝ってあげようか?」
「……美咲さん?」
「あなたの気持ちは分かるわ。10年間想い続けた相手に、他の女の子が現れた。焦るのも無理はない」
葵が一瞬、目を見開いた。
「でも、焦りすぎると逆効果よ。もっと——計画的に」
美咲の眼鏡が光を反射した。
「私、生徒会で色んな相談を受けるの。恋愛相談もね」
「……どうして、私のことを?」
「ふふ、あなたの目を見れば分かるわ。あんなに必死な顔、初めて見たもの」
葵が少し頬を赤らめた。
「手伝ってもらえるなら……お願いしてもいいですか?」
「ええ。でも、条件があるわ」
「条件?」
「最終的に悠斗くんが誰を選ぶかは、彼自身が決めること。私たちは『公平』な環境を作るだけ。それでいい?」
葵は一瞬迷ったが、すぐに頷いた。
「……わかりました」
(廊下で何を話してるんだ、あいつら……)
俺がチラチラと気にしていると、莉奈が顔を覗き込んできた。
「ユウト、どうしたの?気になる?」
「いや、なんでも……」
「ふふ、私も気になるなー。でも——」
莉奈は突然、真剣な表情になった。
「ユウトのお昼は、私が独り占めするんだから」
(いや、それも問題あるだろ……)
午休のチャイムが鳴り、俺は葵に連れられて屋上へ向かった。
「ここなら、静かでしょう?」
葵がフェンス際に布を敷き、お弁当を広げた。彩り豊かなおかずが並び、見ているだけで食欲をそそられる。
「すごいな、葵……」
「ふふ、悠斗の好きなもの、全部覚えてるから」
彼女が箸を取り、おかずをひとつ摘んだ。
「はい、悠斗。あーん」
(いやいやいや!)
「いや、自分で食べるから——」
「だめ。今日は特別なの。……お願い」
葵が上目遣いで見つめてくる。桜色の瞳が潤んで見える。
(これは……殺し文句だ……)
俺が観念して口を開けると、葵が嬉しそうに微笑んだ。
「もぐ。……うまい」
「でしょう?玉子焼き、今朝焼きたてなの」
その時——
「見つけた!」
屋上の扉が勢いよく開き、莉奈が飛び込んできた。
「ユウト、こんなところにいたんだ!」
「莉奈……?」
「ふふ、お昼は私も一緒に食べるね!」
莉奈はすぐ隣——葵と反対側に腰を下ろした。距離が近い。いや、近すぎる。
「ほら、ユウト!私も作ってきたんだ、サンドイッチ!」
「いや、莉奈、それは——」
葵が静かに、しかし鋭い眼光で莉奈を見た。
「……邪魔をしないでいただけますか?」
「邪魔じゃないよ!ユウトの幼馴染なんだから!」
「私も幼馴染です。それに——」
葵が俺の腕にそっと触れた。
「10年間、ずっと悠斗のことだけ考えてきました」
(え……)
莉奈が一瞬、表情を曇らせた。でも、すぐに元気な笑顔を取り戻した。
「私だって、パリにいる間も毎日ユウトの写真見てたもん!夜は星を見ながら、『ユウトは今何してるんだろう』って思ってた!」
「私は日本で、毎日悠斗に会ってました」
「私は距離が遠くて、会えなかったんだもん!」
二人の視線が火花を散らす。俺は挟まれて、どうしていいか分からなかった。
(これ、修羅場……完全な修羅場……)
その時、屋上の扉が再び開いた。
「やっぱりここにいたわね」
美咲が現れた。彼女は二人の様子を見て、冷静に分析するような目をした。
「二人とも、少し落ち着きなさい」
「美咲さん……」
「佐藤くんが困っているわ。見て、あんなに青ざめて」
確かに、俺の顔色は最悪だろう。
「公平にしましょう。今日は葵さんの番。明日は莉奈さんの番。交互に——そうすれば、佐藤くんも楽になるわ」
「……それは」
「私、生徒会副会長として公平を期すわ。異議があるなら、生徒会室までどうぞ」
美咲の眼鏡が再び光った。二人は渋々と頷いた。
放課後、校門前で再び三人は集まった。
「ユウト、一緒に帰ろうよ!」
「悠斗は私と帰ります」
「今日は葵さんの番でしょう?」
美咲が冷静に指摘する。
「そうだった……」
莉奈が悔しそうに唇を噛んだ。でも、すぐに笑顔になった。
「わかった。明日は私の番だもんね!」
「……明日は絶対に譲らないわ」
葵が意地を張った。
「じゃあ、悠斗。行きましょう」
「あ、ああ……」
俺は葵と並んで歩き出した。振り返ると、莉奈が小さく手を振っていた。
「明日は絶対、ユウトを独り占めするからね!」
その声が、夕暮れの空に響いた。
家の前で、葵が立ち止まった。
「悠斗」
「ん?」
「10年の思い、あの子に負けるわけない」
葵の目は、真剣そのものだった。普段の小悪魔な雰囲気は消え、ただの女の子の顔になっている。
「私、絶対に悠斗を——」
言葉は、そこで途切れた。
「……また明日、学校で」
葵はそう言うと、自宅の方へと歩いていった。
俺がドアを開けようとすると——
「ユウト!」
向かいのベランダから、元気な声が降ってきた。
莉奈が手を振っている。夕陽に照らされた金髪が、キラキラと輝いている。
「明日は私の番だね!楽しみにしてるよ!」
(……俺の青春、どうなってるんだ)
二人の少女の声が、まだ耳に残っている。
明日は、一体どうなるのだろう——
俺は、ため息と共に家のドアを開けた。
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