4話 バイラルとスカウト「デブから国民アイドルへ:システムで最強スター誕生」

デブから国民アイドルへ:システムで最強スター誕生2026-04-30 12:36:49

4話 バイラルとスカウト「デブから国民アイドルへ:システムで最強スター誕生」

翌朝、俺はいつものようにスマホを開いた。
通知が数百件溜まっていた。
「え……?」
SNSのアプリを開くと、トレンド欄に自分の名前があった。
『謎の美少女アイドル』
『学園祭 神パフォーマンス』
『小百合 誰?』
震える指で検索を tapped すると、無数の動画が表示された。昨日の学園祭のパフォーマンス。誰かが撮影して、SNSにアップしたものだ。
再生回数は、もう数十万回を超えていた。
「マジで上手いんだけど」
「誰これ? プロ?」
「顔も可愛いし、スタイルもいい」
「どこの学校? 探して」
コメントが溢れている。悪意のある言葉は、一つもない。
(……夢?)
いや、夢じゃない。スマホの画面は、確かに現実だ。
『宿主様、注目度が急上昇しています』
『現在の認知度:地域レベル』
『今後の展開に期待してください』
システムの声が響く。俺はベッドに座り込んだ。
(これが……バイラル?)
昨日まで誰も気づいてくれなかったのに。いじめの標的だったのに。今日は、誰かが探している。誰かが俺のことを話題にしている。
学校に向かう電車の中でも、違和感があった。
隣に座った女子生徒が、スマホの画面を見て、そして俺を見て、またスマホを見た。そして、目を丸くした。
「あ、あの……もしかして」
「……はい?」
「昨日の学園祭で歌ってた人……ですよね?」
「……え、あ、はい」
「マジで!? すごい上手かったです! 動画見ました!」
女子生徒は興奮した様子で、スマホの画面を見せてくれた。そこには、俺のパフォーマンスの動画が表示されていた。
「友達にも自慢しちゃおう。会えたって」
「え、いや、そんな……」
「また歌ってくださいね! 応援してます!」
女子生徒は降りる駅で降りていった。俺は、自分の頬が熱くなっていることに気づいた。
(応援……)
初めてだ。誰かに応援されるのは。
学校に着くと、いつもと違う空気が流れていた。
「あ、いたいた」
「本物だ……」
「すごい可愛いじゃん」
廊下を歩くと、視線が集まる。いつもの蔑みの視線じゃない。興味津々の、好奇の視線だ。
「小百合さん!」
教室の前で、見知らぬ男子生徒が立っていた。スーツ姿の、大人びた雰囲気の人物だ。
「は、はい……?」
「初めまして。私、スタープロ所属の健太と申します」
スタープロ。聞いたことがある。国内有数の芸能事務所だ。アイドルも俳優も、多くのスターを輩出している。
「昨日の学園祭の動画を拝見しました。素晴らしいパフォーマンスでした」
「あ、あの……」
「ぜひ、うちの事務所でお話を伺いたいのですが。今日、放課後にお時間はありますか?」
スカウト。俺は、現実を受け止めるのに時間がかかった。
(スカウト……されてる?)
三日間前の俺なら、絶対に断っていた。怖くて、逃げ出していた。
でも、今は違う。
「……はい。時間、あります」
健太さんの顔がパッと明るくなった。
「ありがとうございます! では、放課後に改めてお迎えに参ります」
名刺を受け取り、健太さんは去っていった。
周りの生徒たちが、ざわついている。
「スタープロって……あのスタープロ?」
「マジでスカウトされてる……」
「やば。本物のアイドルになるんじゃない?」
俺は教室に入った。いつもの席に座ると、隣の佐藤が話しかけてきた。
「お、おい。マジかよ。スタープロだぞ」
「……うん」
「すげえな。お前、いつの間にそんな……」
佐藤は感心したように首を振った。
その時、教室のドアが開いた。
美咲が入ってきた。いつものように、周りに女子生徒を引き連れて。でも、今日は違う。美咲の視線が、俺に向けられた。
「……小百合」
呼びかけられた。いつもの蔑みの口調じゃない。困惑と、何か別の感情が混じった声だ。
「あんた、いつの間に……」
言葉を濁す美咲。俺は、初めて彼女の目をまっすぐ見た。
「何か?」
「……なんでもないわよ」
美咲はそっぽを向いた。でも、その耳が赤くなっていることに、俺は気づいた。
(……あれ?)
いつもなら、もっと攻撃的なはずだ。もっと、罵倒してくるはずだ。
でも、美咲は何も言わず、自分の席に戻っていった。
放課後、校門の前で健太さんが待っていた。
「お疲れ様です。では、事務所までご案内します」
車に乗り、都心の高層ビルへ向かう。窓の外の景色が変わっていく。田舎の風景から、都会の摩天楼へ。
「小百合さんは、歌手を目指されているんですか?」
「はい……ずっと、夢でした」
「素晴らしい。才能は確かです。ただ、プロの世界は厳しいですよ」
「……はい」
「でも、あなたならやれます。昨日のパフォーマンスを見て、確信しました」
健太さんの言葉に、胸が熱くなった。
事務所に着くと、プロデューサーと面談があった。
「歌ってみてもらえますか?」
ミニスタジオに通され、マイクを握った。緊張で声が震える。でも、システムの声が響く。
『ボーカルスキルLv.1、発動します』
『宿主の歌唱力を最大限に引き出します』
歌い始めた。最初は小さな声だった。でも、すぐに声が出てくる。体が覚えている。三日間の特訓が、ここで活きた。
一曲終わると、プロデューサーは目を丸くしていた。
「……これは、練習生レベルじゃない。即デビューできるレベルだ」
「本当ですか?」
「ああ。ただ、もう少しレッスンを積んで、完璧に仕上げたい。三ヶ月後に、デビューを目指せると思う」
三ヶ月。俺の夢が、あと三ヶ月で現実になる。
「契約書をお持ちしました。ご検討いただけますか?」
契約書を受け取り、俺は帰路についた。
家に着くと、システムの通知が表示されていた。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【新ミッション発行】
ミッション:プロデビュー
期限:90日
目標:シングルリリース
報酬:ボーカルスキルLv.2
   ダンススキルLv.1
   魅力オーラ(中)
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『宿主様、次のステージへ進みます』
『国民的アイドルへの道は、ここから始まります』
俺は契約書を握りしめた。
明日から、本格的なレッスンが始まる。
プロのアイドルとして、歩き始める。
その夜、SNSを開くと、自分の動画がさらに拡散していた。
「謎の美少女、正体判明! ○○高校の小百合さん!」
「スタープロにスカウトされたってマジ!?」
「本物のアイドル誕生か」
コメントが溢れている。中には、懸念する声もあった。
「でも、三日間前は太ってたって噂あるけど」
「マジで? 痩せたの?」
「いや、別人じゃない? 昔の写真と比べたら全然違う」
(……あ)
俺は凍りついた。
過去の写真。太っていた頃の写真。いつか、流出するかもしれない。
その予感に、胸が締め付けられた。
でも、今は前を向くしかない。
明日から、本格的なアイドル活動が始まる。
その時までに、何とかしなければ。
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